ホストの「掛け」とは?リスクや返済義務など各種疑問をまとめて解決
ホストクラブには「掛け(売掛)」と呼ばれるシステムが存在します。
ホス狂の女性、うっかり予算をオーバーして遊んでしまった女性にとってはありがたいシステムですが、実はリスクと紙一重であり、気軽に手を出すものではありません。
こちらの記事では、ホストクラブにおける掛けの意味やリスク、返済義務などについて詳しく紹介していきます。
掛けの返済が免除されるケースやトラブル時の対処法についても触れているので、掛けを作って困っている方もぜひチェックしてください!
ホストクラブにおける「掛け」とは?意味を紹介
ホストクラブもしくはホスト個人にホストクラブで遊んだ代金を一時的に立て替えてもらうことを、専門用語で「掛け」もしくは「売掛」と表現します。
借金自体は「売掛金」と呼ばれ、貸した側の立場からは「未収」と呼ぶこともあります。
一般の飲食店などでは「ツケ」と呼ばれるシステムですね。
一昔前まではホストクラブ自体に掛けをするパターンも珍しくありませんでしたが、現在では担当であるホスト個人に掛けをするのが主流のパターンとなりました。
▼担当への掛けが主流になったわけ▼
- 店への掛けは返済意思が薄れやすい
- 店への掛けは実際に踏み倒す客がとても多かった
- 掛けが返済されない場合も担当が肩代わりするためお店のダメージがない
担当への売掛金は、担当が期日までにお客さんから回収するのがホストクラブにおけるルール。
もし回収できなかった場合は担当本人が料金を負担することになり、売掛分のお金はまるまる天引きされる仕組みとなっています。
担当ホストとの信頼関係にも大きな影響を及ぼすため、今後もホスト遊びを楽しみたい場合は、掛けを作ったらしっかり返済すること。
もしくは最初から掛けをせず、当日払える範囲内で遊ぶことが重要です。
ホストクラブの掛けが返せないときに考えられる4つのリスク
ホストクラブで掛けをして返せなくなってしまった場合、大きく4つのリスクが考えられます。
▼ホストに掛けを返さないリスク▼
- 実家や職場まで取り立てが来る
- SNSや掲示板などでさらされる可能性あり
- 消費者金融や風俗を紹介される
- 訴訟を起こされるかも
それぞれ詳しく確認していきましょう。
実家や職場まで取り立てが来る
先述のとおり、売掛金が回収できない場合は担当の給料から全額天引きされることになります。
こうなると担当も必死ですから、自宅はもちろんのこと実家や職場まで取り立てに来られる可能性あり。
掛けをする場合、担当との間で返済期日を設定するのが普通ですが、期日を過ぎても連絡を無視するなどして返済しない場合は直接担当が取り立てに来るかもしれません。
ホストクラブで遊ぶ際は受付で身分証のコピーを取られますから、ここから個人情報を入手したり、さらに調べたりすることはいくらでもできてしまいます。
SNSや掲示板などでさらされる可能性あり
掛けを返さず逃げたり放置したりしていると、担当から恨みを買ってSNSや掲示板でさらされてしまう可能性があります。
本名や顔写真、ひどい場合は住所や勤務先など、個人情報がネット上に拡散される恐れがあるのです。
他店のホストなどもSNSや掲示板はチェックしていますから、掛けを返さない人物として晒されればほかのホストクラブも利用できなくなったり、目撃情報を共有されたりといったリスクもあります。
消費者金融や風俗を紹介される
このままでは売掛が回収できないとホストが判断した場合、借金のための消費者金融や、売掛金を稼ぐための風俗を紹介してくる可能性があります。
あの手この手で追い詰めてくるホストが相手だった場合、判断能力がにぶってしまった女性が実際に借金をしたり、風俗で働き始めたり…といった展開は珍しくありません。
消費者金融への借金は法外な利息を取られたり、ひどい取り立てに遭うリスクがあります。
また、風俗で一度働くと、掛けを返した後もホストクラブで使うお金のため業界から足を洗えなくなるパターンが多く見受けられます。
どちらにしても、女性一人の人生に与える影響は非常に大きなものになるでしょう。
訴訟を起こされるかも
本格的に売掛金を回収しようと思った場合、ホストクラブやホストが訴訟を起こすことがあります。
- 掛けが60万円以下の場合…少額訴訟
- 掛けが60万円を超える場合…通常訴訟
どちらにしても、裁判を起こされて訴えられるというのは精神的にも社会的にも大きなダメージになるでしょう。
ホストクラブやホストが裁判を起こすイメージがつかず、「本当に訴えられるわけがない」と考えてしまう女性も少なくありません。
しかしホストクラブ関係者が訴訟を起こすことは実際にありますので、思い込みは危険です。
ホストクラブの掛けを返済しなくてもよい5つのケースとは
ホストクラブの掛けは自分が遊んだ分の飲食代ですから、基本的には返さなければならないものです。
しかし、法律的な側面から見ると返済しなくてもよいケースが5つあるということも知っておきましょう。
▼ホストの掛けを返済しなくても良いケース▼
- 売掛を証明するものがない
- 時効が過ぎている
- ホストに強要されて掛けをした
- 掛けをしたのが未成年
- 利息が法外
それぞれ紹介していきます。
売掛を証明するものがない
掛けをしたことを証明できる証拠が一切ない場合、たとえ裁判を起こされたとしても返済を免れることは可能です。
売掛を証明するものとして代表的なのは借用書。
借用書とは、いつ誰が誰にいくらのお金を借りたのか、またいつまでに返済するかなどを明記した正式な書類のことです。
また、借用書以外にも下記のものが、売掛を証明する証拠として成立する場合があります。
- 掛けをしたことがわかる伝票やレジのデータ
- 担当以外のホストの証言
- 売掛をしたことがわかるLINEなどのやり取り
- 防犯カメラの映像や音声データ
上記を踏まえたうえで一切何の証拠もない場合は、掛けが無効になる可能性が高いです。
時効が過ぎている
ホストクラブへの掛けは飲食店に関する「消滅時効」の対象になるため、5年の時効が過ぎていれば支払い義務はありません。
ただし、単に掛けを作ってから5年経過した…というだけでは消滅時効の条件を満たせないことがあります。
▼消滅時効の条件▼
- 5年の間に掛けの請求をされていない
- 5年の間に一度も返済していない
- 5年の間に相手から裁判を起こされていない
上記のいずれかの展開があった場合は、その日から再度5年の時効が始まってしまいます。
たとえばホストから掛けを請求する連絡が来るたびに、消滅時効は先延ばしになり続ける…ということです。
「ホストクラブの掛けは1年逃げ切れば返済しなくて良い」という噂が流れていますが、飲食店の消滅時効は2020年の法改正で1年から5年に延長されたので覚えておきましょう。
ホストに強要されて掛けをした
ホストに強要されたり、脅迫されたりして売掛を作った場合の返済義務はありません。
民法第96条にて、詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができると定められているからです。
契約自体が取り消しになるため、売掛金がいくらであろうが返済義務も消滅します。
おどされて掛けをさせられたことがわかる何らかの記録があれば有利な証拠になるので、残しておきましょう。
実際、平成24年にホストが女性客に400万円を超える掛けを返済させようと裁判を起こしましたが、ホスト側が掛けを強要していたと判断され敗訴しました。
掛けをしたのが未成年
未成年が親の同意なしに行った契約は無効になる、という法律があります。
そのため、契約の一環として未成年が作った掛けは全面的に無効になり、返済する必要はありません。
ただし20歳以上と嘘をついていた場合や、未成年でも結婚している場合は例外になります!
2022年4月に法改正が行われ、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
これまで契約無効の対象であった18歳・19歳でも契約が有効となる対象になりましたので、覚えておきましょう。
利息が法外
売り掛けは、一般的な借金と同様利息を取ることができますが、法外な金利(利息が年利109.5%)による請求は「出資法違反」として契約が無効になります。
すでに支払っていた掛け金がある場合、ホストに返金を求められます。
また、年利が109.5%を超えていなかったとしても、下記の利率をオーバーしている場合は、超えている部分の支払いは不要になります。
- 10万円未満…年20%
- 10万円以上100万円未満…年18%
- 100万円以上…年15%
例えば100万円掛けをしたとして、年間15万円以上の利息を請求されている場合15万円を超える分の支払い義務はない、ということになります。
ホストクラブの掛けでトラブルになった時の対処法
そもそも掛けはしないに越したことはありませんが、作ってしまったものは仕方がありません。
掛けが原因でトラブルに巻き込まれた時には、下記のいずれかの対処が必要になります。
- 警察に相談する
- 弁護士に相談する
脅迫や暴力など直接的な被害に遭っている場合は、すぐに警察に相談しましょう。
「掛けを返済したくない」
「支払い義務があるのか知りたい」
「掛けを滞納して嫌がらせをされている」
などの場合は、水商売関係のトラブルに強い弁護士に相談してみるのも一つの方法です。
もちろん、警察に行くべき事例かどうか判断ができない場合なども弁護士に相談することができます。
ひとりで問題を抱え込んで悩むのは一番ダメなこと。
まずは相談する勇気を持ちましょう!
ホストの掛けにまつわる豆知識を紹介
最後に、ホストクラブの掛けにまつわる豆知識をまとめて紹介していきます。
専門用語「掛け飛び」と「掛け遅れ」とは
ホストクラブの掛けについては、「掛け飛び」「掛け遅れ」といった関連する専門用語があります。
掛け飛び
掛けを踏み倒してお客が音信不通になる状況のこと
掛け遅れ
掛けの支払いが遅れている状況のこと。
掛け飛びの前段階としてホストが警戒を始める。
掛け飛びはもちろんのこと、掛け遅れもトラブルのきっかけになるので注意しましょう。
掛けを返さなかったら担当はどうなる?
掛けを飛ばれたホストは給料から売掛金の全額分を天引きされることになります。
このとき、給料で支払いきれないとなれば今度はホストがお店に借金を作る形になってしまうのです。
結果、担当がメンタルを病んだり、店を飛ぼうとしてトラブルに巻き込まれたり…と負の連鎖が起こる可能性があります。
自分が遊んだお金であること、強要されたわけではないことが前提で、掛けを作ったら必ず返すのがホストクラブで遊ぶ際のルールということは忘れないでくださいね。
借用書を書いてしまったら返済義務は確実?
掛けをする際に借用書を書いていた場合、民事裁判で争えば負ける可能性が高く、掛け金の支払いを命じられてしまいます。
また、支払うつもりがないのに掛けを作った場合は詐欺罪に問われてしまうこともあります。
ただし、脅迫されて書いた借用書は無効になるので、脅しの証拠やケガ・精神的苦痛で通院した場合は診断書を取っておきましょう。
まとめ
今回は、ホストクラブにおける掛けについて、様々な角度からまとめて紹介しました。
ホストクラブはお金がかかるうえ、一度ハマってしまうとなかなか抜け出せない遊びです。
しかし掛けという名の借金をしてまでのめり込むのは、本人のその後の人生に悪影響を及ぼす恐れが大きいです。
自分を追い詰めない予算の範囲内で、健全に遊ぶようにしたいものですね。