ホストクラブの広告NGワード一覧。
風営法改正で使えなくなった言葉と、使える言葉。
2025年の風営法改正により、ホストクラブをはじめとする接待飲食営業の広告表現が大きく制限されました。看板・店内ポスター・名刺・ホームページ・SNSまでが対象です。警察庁の通達をはじめとする一次資料をもとに、キャベルが制作の現場で使っている判断基準をそのまま公開します。
はじめにお伝えしておきます。法令に「これを使えば安全」という公式のNGワード辞典は存在しません。本ページは公表されている法源から整理したものであり、網羅ではありません。判断に迷う表現は、所轄警察署または風営法に詳しい弁護士へご確認ください。
いま何が起きているのか。
2025年の法改正と、その後に出た警察庁通達が実務を動かしています。
改正のスケジュール
令和7年法律第45号による改正風営法は2025年5月28日に公布、一部の規定を除いて2025年6月28日に施行されました。欠格事由に関する規定は2025年11月28日施行です。「2026年の改正」と呼ばれることがありますが、実務を動かしているのはこの2025年改正と、その後の通達運用です。
広告規制の法的な根拠
広告規制の土台は、もともと風営法16条にある「営業所周辺における清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝をしてはならない」という定めです。2025年6月4日付の警察庁通達は、この16条の運用を接待飲食営業について具体化し、どのような表示が違反にあたるかを類型と具体例で示しました。
あわせて改正法では、18条の3(料金についての虚偽説明、恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求、客が注文していない飲食等の提供の禁止)と22条の2(威迫して困惑させること、売春等の要求の禁止)が新設されました。広告文言がこれらの行為につながる場合、広告そのものが問題視されます。
規制されるのは、店の外の看板だけではありません
警察庁通達は営業所内部の掲示物にも注意を促しています。施行規則7条は、善良の風俗や清浄な風俗環境を害するおそれのある写真・広告物・装飾などを設けないことを求めており、営業開始後に店内へそうした広告物を置けば、法12条の構造・設備の維持義務違反にもなり得ます。
つまり、看板だけ差し替えて店内ポスターを残す運用は安全ではありません。制作物を作る際は、次のすべてで同じ基準を守る必要があります。
- 店外看板・ネオン・デジタルサイネージ・アドトラック
- 店内パネル・ポップ・キャスト紹介ボード・メニュー表
- チラシ・ビラ・名刺
- 公式ホームページ・SNSアカウント・投稿・ハッシュタグ
違反した場合
まず行政指導が行われ、従わない場合は法25条の指示処分等が検討されます。そこから営業停止命令(最大6か月)、さらに許可の取消しと5年間の再取得制限へと進みます。デザイン1枚のために営業許可を失うリスクは負うべきではありません。
なお同通達は、広告・宣伝規制違反に対する行政処分について、当分の間、各都道府県警察があらかじめ警察庁と調整するよう求めています。全国で統一した運用が意図されているため、地域ごとの独自ルールより先に、この通達への適合を確認するのが合理的です。
警察庁通達が例示した表現。
これは印象論ではなく、全国警察に示された公式の例示です。
以下は、2025年6月4日付の警察庁通達が広告・宣伝規制違反にあたる類型の例として明示した語です。そのまま使うことは避けるべきで、言い換えても同じ効果を持つ表現は同様に危険です。
営業成績を直接示す表現
- 年間売上〇億円突破
- 〇億円プレイヤー
- 億超え
- 億男
- 指名数No.1
客に高額な飲食をあおり、違法行為を助長するような歓楽的・享楽的雰囲気を外部へ拡散させる表示とされます。
営業成績上位を推認させる役職・称号
- 総支配人
- 幹部補佐
- 頂点
- winner
- 覇者
- 神
- レジェンド
- 新人王
順位や成績を間接的に示すため、売上表記と同じ扱いになります。役職名であっても、上位売上者の称揚を想起させるものは対象です。
従業者間の競争を強調する表現
- 売上バトル
- カネ
- SNS総フォロワー数〇万人
接客従業者間に過度な競争意識を生じさせる表示とされます。
客の感情を過度に煽る表現
- 〇〇を推せ
- 〇〇に溺れろ
好意を抱く従業員への高額支出を煽り、感情の没入を強く促す表示とされます。
重要なのは、通達が問題視しているのが単語そのものより、その単語が作り出す広告効果だという点です。「神」「winner」「頂点」は辞書的には一般語ですが、接待飲食営業の広告に載ると営業成績上位・競争優位として読まれます。したがって「覇王」「帝王」「絶対王者」「最強」などに言い換えても安全にはなりません。
通達には無いが、危険な表現。
風営法以外の法令・広告媒体の規約に触れるものです。
ここから先は警察庁通達の例示語ではありません。ただし景品表示法・消費者契約法・広告媒体の規約の観点から、広告文言としては非常に危険です。制作の現場では代替表現をご提案しています。
| 業界No.1/日本一/地域No.1景品表示法(有利誤認・比較広告) | 合理的な根拠資料がなければ、優良誤認・有利誤認にあたるおそれがあります。 |
|---|---|
| 〇〇最安/他店より絶対お得景品表示法(比較広告ガイドライン) | 比較の条件がずれていると不当な比較広告になります。 |
| 完全無料/初回0円風営法17条・施行規則/景品表示法/広告媒体の規約 | 指名料・サービス料・税・最低注文などが別にかかるなら誤認を招きます。「60分5,000円(税・サービス料別)」まで示すのが安全です。 |
| 追加料金なし改正風営法18条の3(料金の虚偽説明の禁止) | 実際にボトル・延長・同伴・深夜料金があるなら、料金に関する虚偽説明にあたるおそれがあります。 |
| 君だけ特別/好きなら来て/来ないと関係が終わる改正風営法18条の3/消費者契約法 | 恋愛感情等につけ込む勧誘とされ、契約自体が取り消される可能性があります。DM・SNSでも同様です。 |
| シャンパンタワー確定/開栓前提改正風営法18条の3 | 客が注文していない飲食等の提供(既成事実化)にあたるおそれがあります。希望制・価格明示・事前同意が必要です。 |
| 売掛歓迎/ツケで安心改正風営法22条の2/消費者契約法 | それ自体が直ちに違法とはされていませんが、支払トラブルの誘発につながる文脈で極めて危険です。 |
| 18歳未満OK/高校生歓迎風営法/各都道府県の青少年保護条例 | 未成年者の立入り・飲酒規制と正面から衝突します。 |
「No.1」は二重に危険です
順位表示は、風営法上の競争煽りにあたるだけでなく、景品表示法の有利誤認・比較広告の問題にもなります。消費者庁は、実証されていない比較や、重要でない事項を強調する比較は不当表示にあたり得るとしています。「指名数No.1」「〇〇最安」といった表現は、二つの法律に同時に触れる可能性があります。
恋愛感情に触れる表現は、契約自体が取り消されます
消費者庁は2023年11月、ホストクラブなどにおける不当な勧誘について、好意の感情を不当に利用した契約は消費者契約法により取り消せることを周知しました。「君だけ特別」「来ないと関係が終わる」といった表現は、広告規制以前に、その後の売掛金そのものを失うリスクにつながります。
広告媒体の規約にも同じ基準があります
Google は不実表示のポリシーで、購入の前後にユーザーが負担するすべての費用や支払モデルを明確に開示しないことを禁じています。TikTok も、ランディングページに価格・会社情報・利用条件などの有効な情報を表示することを求めています。SNSで集客する場合、法令をクリアしても媒体側で配信が止まることがあります。
実際にあった処分と裁判例。
「気をつけましょう」ではなく、現実に営業許可が取り消されています。
| 2024年1月・北海道公安委員会営業者に営業停止3か月 | 歩行中の女性への客引きが、ホストクラブ営業に関して行われた |
|---|---|
| 2024年5月・東京都公安委員会営業者の風俗営業許可を取消し | ホストが売掛金の返済名目で現金を要求し、スカウトを介して性風俗店に紹介して売春させた |
| 2012年10月・東京簡易裁判所暴利性・公序良俗違反が問題となり、原告の請求を棄却 | ホストクラブ飲食代債権の請求。8回で合計287万8千円、1回平均約36万円の高額性が争点になった |
| 2025年8月・知的財産高等裁判所控訴審で損害賠償の一部を認容 | YouTuberのホストクラブ体験動画を、店頭モニターの映像として無断使用。「広告としての性質」が争点になった |
広告の文言そのものだけが争われた裁判例は多くありません。実際には、高額請求・売掛回収・違法な客引き・店頭モニターでの映像利用といった、広告と営業実態が接続した場面で問題になっています。「この一語が違法か」より「この広告がどんなトラブルの入口になるか」で考えるのが実務的です。
使える言い回し。
事実を正確に書く表現が、いちばん強い広告になります。
公的な「使ってよい言葉」のホワイトリストは存在しません。以下は、法令・通達・媒体規約から逆算した、説明責任を果たしやすい表現の型です。
| 料金の事実表示税・サービス料・指名料の有無を必ず併記します。 | 初回料金 60分 5,000円(税込) |
|---|---|
| 条件付き料金の明示強調表示だけを大きくせず、条件も同じくらい見えるように配置します。 | 初回料金 60分 5,000円+サービス料20%+指名料別 |
| 料金項目の列挙予約画面・店頭・SNSで表記を一致させます。 | セット料金/延長料金/指名料/同伴料/サービス料/税 |
| お店の客観情報古い情報の放置も誤認の原因になります。 | 営業時間 20:00〜LAST/定休日 日曜/所在地・電話番号 |
| イベント告知売上やランキングと結び付けないこと。 | 周年イベントを〇月〇日に開催 |
| キャスト紹介売上実績・順位・称号は載せません。 | 趣味・出身地・得意な会話テーマ・出勤予定 |
| 空間・サービスの説明実態と異なる雰囲気訴求は避けます。 | 落ち着いて会話を楽しめる空間/カラオケ設備あり |
| 年齢・飲酒のルール実際の運用と一致させます。 | 18歳未満入店不可/20歳未満飲酒不可 |
イベント名は、そのまま使えます
生誕祭・バースデーイベント・周年・アニバーサリー・グランドオープンといったイベント名は、順位や売上を示さない限り問題ありません。「〇〇バースデーイベント開催」は安全ですが、「〇〇を推してNo.1にしよう」「今月の売上王決定戦」は危険です。イベントは事実で伝え、競争や貢献要求で煽らない——これが線引きです。
ただし禁止対象の肩書と組み合わせないでください。「生誕祭」は問題ありませんが、「総支配人 生誕祭」のように禁止された役職と併記すると規制に触れます。「就任祭」も、就任する役職名のほうが問題になります。
肩書きの言い換え
業界では、一般企業に近い職位への置き換えが進んでいます。「総支配人・支配人」は部長、「幹部補佐」は班長、「副主任」は係長、「売上バトル」は発表会といった具合です。伝えたい価値(信頼・実力・人気)は、順位以外の見せ方でも十分に表現できます。写真の扱い、書体、余白の取り方で「格」は作れます。
公開前のチェックリスト。
制作物を世に出す前に、この順番で確認してください。
| 売上・指名・順位・上下関係を示す語がないか | No.1・億・王・神・winner・推せ 等を削除 |
|---|---|
| 恋愛・依存・関係破綻を示唆していないか | 「君だけ」「会わないと終わる」等を削除 |
| 料金が完全に表示されているか | セット・延長・指名・同伴・税・サービス料・最低注文を明記 |
| 強調表示と条件表示のバランス | 「初回〇円」だけを大書きせず、条件も同程度に見える配置 |
| 店頭・サイト・SNS・予約導線が一致しているか | 価格・時間・支払方法の不一致をなくす |
| キャスト紹介が売上称揚になっていないか | 趣味・出勤・接客傾向を中心にし、実績称号を外す |
| No.1・最安・無料の表現に根拠があるか | 調査資料・比較対象・時点・条件を保存。なければ削除 |
| 未成年・飲酒の表示が適切か | 18歳未満入店不可・20歳未満飲酒不可 等を必要に応じて明記 |
| 店内ポスターも点検したか | 外部広告だけでなく店内装飾も同じ基準で確認 |
| DM・キャスト個人SNSの文面を監督しているか | 店舗広告と同じ審査ルールを適用 |
| 根拠資料を保存しているか | 掲載前のスクリーンショット・料金表・比較資料・承諾書を保管 |
これを満たしても絶対に安全というわけではありませんが、現時点で公表されている法源に照らして、もっとも説明しやすい手順です。
地域による違い。
広告文言の本体は全国一律。周辺の条例には地域差があります。
広告文言そのものの規制は、警察庁通達をもとに全国で統一した運用が志向されています(処分時に警察庁と事前調整)。現時点で「東京だけこの語がNG」といった公開された差異は確認しにくい状況です。
一方、周辺の条例には地域差があります。東京都では、青少年条例により青少年にホストクラブ等の客になるよう勧誘することが禁止されています。神奈川県の資料では、勧誘にチラシ・名刺・電話・メール・SNSが含まれると明示され、広告時には青少年が客になれない旨の表示を求めています。
全国の都道府県について個別確認は行っていません。出店地域の条例は、所轄警察署または地元の行政書士へご確認ください。
出典と免責。
本ページは公開されている一次資料をもとに、キャベルが制作現場の目線で整理したものです。
出典(2026年7月20日時点で全URLの掲載を確認)
- 警察庁 生活安全局保安課「接待飲食営業における広告及び宣伝の取扱いについて(丁保発第104号)」(2025年6月4日)
資料を見る → - 警察庁 生活安全局長「改正風営法の解釈運用基準」(2025年5月30日)
資料を見る → - 警察庁「悪質ホストクラブ対策 特設ページ(施行スケジュール・資料集)」(2025年5月28日掲載)
資料を見る → - 警察庁「検挙事例・行政処分の事例」(2024年公表)
資料を見る → - e-Gov 法令検索「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(16条・17条ほか)」(現行条文)
資料を見る → - 消費者庁「ホストクラブなどにおける不当な勧誘と消費者契約法の適用について」(2023年11月30日)
資料を見る → - 消費者庁「有利誤認表示について」(現行ページ)
資料を見る → - 警視庁「東京都青少年の健全な育成に関する条例の概要」(2023年10月1日更新)
資料を見る → - 神奈川県「有害役務提供営業の規制概要(勧誘にチラシ・電話・SNSを含む)」(県公開資料)
資料を見る → - 大阪府警「悪質ホストクラブ対策等に関する風営法改正について」(2025年6月)
資料を見る → - 裁判所「令和6年(ネ)第10085号 損害賠償請求控訴事件(店頭モニターでの動画使用)」(2025年8月28日判決)
資料を見る → - 裁判所「平成24年(ハ)第15523号(ホストクラブ飲食代債権請求)」(2012年10月24日判決)
資料を見る →
本ページは、上記の公開情報をもとにキャベルがデザイン制作の現場目線で整理したものであり、法的な助言ではありません。また、法令に公式のNGワード辞典は存在せず、本ページの一覧も網羅ではありません。個別の表現が規制に該当するかどうかの最終的な判断は、所轄警察署または風営法に詳しい弁護士へご相談ください。法令・運用は改正される場合があります(最終確認:2026年7月20日)。